CONCEPT
起伏の激しい複雑な地形は日本の山岳地帯の特徴であり、このような地形では風が乱れやすく、乱れた風が風車に悪影響を与える可能性があります。したがって、複雑な地形上に風力発電を計画する際には、乱流のリスクに注意が必要です。安定かつ効率的なウインドファームを実現するために、風の乱れ、すなわち乱流のリスクを把握することは極めて重要です。そのために、下記のステップに従うことをお勧めします。
01
CFDによる観測マストの位置を検討
適切な位置は成功への第一歩
Shading
地形
一般的に、風が斜面を駆け上がる際の増速効果により、標高が高ければ高いほど風が強くなります。しかし、周辺地形の影響により、そうならない場合があります。黒マスト位置の標高は赤マストより100m高い位置にあります。平均風速は赤より黒のほうが高いと期待したくなりますが、黒マストは赤マストより風速が1メートル弱いです。その原因は、上流に風を遮る地形によります。この遮る地形によって乱流が発生し、赤地点より風速の変動が大きく、突風が頻繁に出現します。風車は、風が強く突風が少ない位置に設置すべきであり、風車(観測マスト)も黒マスト位置より赤マスト位置の方が適切です。地形の影響によりサイト内で風況は大きく異なる可能性があるため、観測マストの位置を検討する際には、事前にCFDを行いましょう。
02
CFDによる風車位置を検討
乱流のリスクを事前に把握
Case1
プロジェクト名: 太鼓山
場所: 京都府伊根町
風車: Lagerwey KW750-52
設置: 2001年11月
Case4
場所: オーストラリア
風車: Vestas V66
設置: 2004年
Case6
プロジェクト名: 新出雲
場所: 島根県出雲市
風車: Vestas V90
設置: 2009年4月
03
風況に応じた風車機種選定
安定した運転・発電に不可欠
風車選定は登山靴選びと似ている。自分の足にフィットするのはもちろんですが、靴の種類も非常に重要。軽いハイキングには、靴底が軟らいトレッキングシューズが向いてる、重いリュックを背負って、長時間歩くなら厚い靴底のほうが適切。沢登なら滑りにくい特殊な靴がある。厳冬期の冬山なら、保温性の高い靴は絶対に欠かせない。要するに、目的や地面状態によって適切な靴を選ぶのが大切です。同様に、複雑な地形上に風車を選定する際には、サイト内の乱流(地面状態)及び風車機種の構造(靴の種類・特徴)を理解することが必要。同じ乱流クラスでも、風車機種によって、設計・構造は大きく異なる。サイトの乱流に耐えれない風車を選択すると、壊れる原因となり、稼働率が下がります。逆に、サイトの乱流に耐えられる風車を選んだら稼働率の低下が避けられます。また、風車の構造上最も弱い部分に強い衝撃が加わったら、その部分が頻繁に壊れる可能性があるため、高度な知識と経験に基づく、事前対策、破損頻度などを風車メーカーと協議、確認します。プロジェクト期間は20年と長いので、機種選定を慎重に行いましょう。
04
風力発電設備の適切な検査と保守
常に万全な状態で稼働
風車は見た目よりは複雑な機械であり、時には厳しい環境に晒されて運転されています。その為にその運用・保守は一般的な工業機械などと比べても決して易しいなどと言うことはなく、むしろ難しい局面もあるのです。定期的に適切な点検や保守作業が実施されなければ不具合状態が蓄積して運転不能となり、また、損傷箇所が生じれば部位によっては補修部品の到着を待って長期間の運転停止を余儀なくされて稼働率と共に発電電力量も大幅に低下してしまいます。とりわけ複雑地形の乱流の影響が懸念されるサイトにおいては設計上の想定を超えた荷重やその変動が作用している可能性があり,通常では何でもないような部位に問題が発生していることがあります。その為、乱流の影響と風車の特性を十分に考慮した点検・保守が重要になってきます。そのような点検・保守を実施するために必要なことはなんでしょう?風車についての基礎的な知識はもちろんですが、とりわけ重要なのは風車それぞれの機種についての設計的な知見と実環境での運転・保守・修理・改良の経験なのです。